120 / 1053

第5章の7

 すると高橋は、 「いや…そんなのドメスティカさんもウチも系列違うから関係ないし。 気にしなくていいよ。他にも何かある? 」  「その…噂を立てられてるんです。」 傷口を開く思いで、麻也はどうにか言葉にした。 「どんな? 」 「前の社長と俺が…その…」 「つきあってた、みたいな? 」 「はい…」 すると高橋はあっさりと、 「事実無根なんでしょ? そういう男同士ってのはマスコミにはのらないから大丈夫だよ。 それにしても麻也くんみたいに…綺麗だと、何かと大変だな。」 「ファンにまで…」 「ファンは諒と麻也の噂の方が好きだからすぐに消えるよ。」 「わかりました。ありがとうございます。」 事実無根という言葉が引っかかったが、これ以上麻也は言うこともできず、 みんなの待つ廊下に出た。 「どうしたの? 」 何でもないよ、と麻也は笑顔を作り、本田の後ろを歩き始めた。 真樹にはわかっただろうなと思う。  今回は麻也も事前に親と相談し、メンバーが事務所とレコード会社と契約したのは翌週だった。

ともだちにシェアしよう!