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第5章の14

「だってその『本命』って麻也さんのことだもん。」 「は? 」 「まさか社長に本当のことは言えないでしょ。 それに、女の子たちとはきれいさっぱり別れたし。」 「でも、結局、女好きじゃん。」 すると諒はかなり困ったように、 「麻也さんと出会う前は確かにそういうところもあったかもしれない。 でもね、俺だって悩んだんですよ。 男を…っていうか、初めてこんなに強く好きになった人が麻也さんで、 たまたま男性だったから、俺も困っちゃって… ちょっと普通に戻るべきかと、色々なタイプの女の子とつきあってみたんです。 麻也さんみたいに頭のいいヤツばかりとね。 でも…やっぱり俺には麻也さんしかいないってわかって…」 今のところ、麻也がバンドを引っ張っている面があるからその強さに憧れるとか、 バンド活動の先輩だから尊敬できるとか、 そういう感情を、諒ははき違えているのではないかと麻也は不安になる。 でも、いつしかこの目の前の諒にすがりつきたくなってきてもいて… でも、諒の、自分に対する誠実さが伝われば伝わるほど、 あの忌まわしい事件が思い起こされる… (俺はもう、穢れてしまってる… こんな、誠実さを示してくれるヤツとつきあったりしちゃいけないんだ…)

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