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第5章の16

「俺がこれからは守るから。今までの傷も癒してあげるから。」 そんなことさせられないよ、と言わなければいけないとわかっているのに、 麻也の体は勝手に動いて、諒の肩に頭を預けてしまう。  …ひと心地ついて…  麻也が頭をあげると、目の前には諒の顏があって、それが近づいてきて…  優しいキス。  あやしてくれるように、何度も何度も…  そのうち麻也は自分のほうからも求めていることに気づいて、恥ずかしくなって顔を離した。  が、諒ががばっと抱きしめて、 「麻也さん、今のが麻也さんの本心だと思っていいんだよね?」 言葉には、ならなかった。でも、諒に嫌われたくない、と瞬時に思い、諒の目を見て、かすかにうなずいた。 諒はまた麻也をしっかりと抱きしめると、しばし無言でいたが、そのうち決心したように、 「麻也さん、あっちの部屋に行こう。」 と、麻也を立ち上がらせ、優しく肩を抱いてエスコートしてくれたが… 構造上、寝室なのはわかっているわけで… ドアを開ければ諒のベッドがあって…麻也は思わず息をのんでしまった。 事の重大さがあらためてわかったから…  

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