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第5章の18

(女の子じゃあるまいし…) と、心の中で自分に言い聞かせる。 でも、本当はあの出来事のせいなんだ… しかし、そうとは知らない諒は、悲しそうな目で見下ろしてきて、 「麻也さん、もし、本当は俺のこと受け止められないなら、今言って。 バンドを壊さないために俺の言うことを聞いた、ってのはナシね。」 「うん。」 (これは、俺が望んだこと…) でも、諒はこうも言ってくれて… 「本当に? 麻也さんにここで失恋しても、俺は公私混同しないでバンドは続けるよ。 それでもどうなの? 」 その慎重な誠実さが本当に嬉しかった。 が、それなのに、麻也は自分の気持ちにふさわしい言葉をなかなか見つけることができなかった。 諒の愛は欲しい。でも自分の過去は… (ごめん、諒、許して…) 麻也は両腕でしっかりと諒を抱き寄せ、諒の頬に自分の頬をぴったりとくっつけた。 それは自分の、この、過去を隠し始める瞬間の表情を見せないため… 「麻也…さん…」 自分の肩に顎をのせてきた諒の声は、信じられない…と喜んでいる声音だった。 その声を聞いて、麻也は吐息がもれてしまった。 それは自分でも恥ずかしくなるくらい甘くて… すると、諒はまた麻也の目を見据えて…

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