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第5章の32
「…あのっ、麻也さん…? 」
「えっ? 」
「急にどうしちゃったの? 」
麻也はあわててごまかした。
「…いやあ、何かすごいことになっちゃったから…」
「すごいって…まあ、そうだけど…いいじゃん。」
と、諒はハグしてくれた。麻也は幸せな気分だった。
しかし、それだけに、今日はこれ以上を望んではいけない気もして言ってみた。
「こんな時間だから、俺、やっぱり帰る。」
当然ながら、諒はパニックになった。
「えっ? 急に、何で? 」
まさか夕方が嫌とも言えず、また、幸福の上限についても言えず、
少し悩んだが、諒があまりに不安げなので、
「う…ん…お互い、忙しいじゃん。」
と言って、でも引き留めてほしくなってうつむいた。すると諒は、
「忙しいのはそうだよ。おまけに曲合わせる前に体合わせちゃって申し訳ないと思ってるけど…」
「もう、諒ったら…」
不謹慎だと思いつつ、笑ってしまった。
その間にも、諒はしっかりと麻也の手を握ってくる。
家に帰れば真樹がいるとはいえ、やっぱり寂しい気がして麻也も揺れる。
それで本音をもらしてしまった。
「…あのね…恥ずかしいんだけど…」
「なになに? 」
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