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第5章の34

「あ…諒…でも、ごめん、俺やっぱ下半身がちょっと…」 「うん。今日はもう中には入んないよ…」 と言った諒の方が真っ赤になっている。そしてまたぎゅっと抱き締めてくる。 「もー信じらんないよっ! 麻也さんが俺のものなんて…」 「でも、諒は本当にこれで良かったの? 」 「なーにをおっしゃいますかっ! 」 「だって、男を抱いちゃったんだよ。禁断の世界じゃん…」 「って、いうか、俺、麻也さんと結ばれたとしか思ってないから。 ライブハウスの楽屋で、天使の麻也さんに一目ぼれして、 本当にここまで来れたんだってびっくりしてるだけだから…」  麻也の方は、もちろん手放しでは喜べない部分がある。  諒への気持ちはようやく自分の気持ちが言葉でまとまった段階。  諒の方はもう自分への気持ちは「愛」にまで育っているかもしれないが、 自分の方はまだ「恋」ぐらいだと思うのだ。  でも、体を清めてくれたことには本当に感謝していて… そんな思いがないまぜになっているせいもあってか諒よりは冷静な部分があるような… そしてそれは諒に少しばかりは気づかれてもいいような気がしている。 あまりに何もかも許してしまう方が、本当のことを知られる危険性が高いし、 諒に飽きられる可能性も高いと思うからだ。  男を追わせるにはちょっとミステリアスな方がいい。

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