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第5章の36
すると諒はニヤリ、と笑い、
「エクレアとか、ビーフストロガノフ弁当とか、温野菜のサラダとか。」
「えー、俺の好きなものばっかじゃん…何でわかったの? 」
「うふ。でも今頃は、麻也さんにぶん殴られて、一人で泣きながら食べてるかと思ってた。」
「ぶん殴るなんて…」
「だって、『オトコなんてヤだー!』って言われたら終わりだったもん。」
それくらい遠いはずの距離を、二人で越えてしまったのだと思い知らされる。
感謝はしながらも、麻也が少しせかして食事を終えると、
いよいよ歌詞ノートとスコアを広げたが…
「麻也さん、真樹に、泊まりになるって電話した方が良くない? 」
「いやあ…」
後ろめたさから、腰が引ける。
「仕方ないじゃん。仕事で遅くなるんだから。」
「…スケジュール狂わせたの誰だよ…」
「俺は麻也さんにしか狂ってません。あっかんべー、だ。」
「んもー…」
仕方なく、作業が遅れて遅くなると、携帯に電話すると、
当たり前だが、真樹は何も疑う様子もなく電話を終えた。
麻也が携帯をバッグにしまうと、諒は膝を抱えて、
「曲はいいけどさ~、麻也さん、明日本当に帰っちゃうの? 」
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