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第5章の37
「うん。だって、ずっとここにいるわけにもいかないじゃん。」
「うーん、初めてのレコーディングのために、作業が終わらないとか…」
「…本当に終わらなくなりそうじゃん…」
「うーん、否定できないけど、でもさ、責任の半分は麻也さんにもあるんだよ。」
「何でだよっ? 」
「だって、あんな…ああ、言えないっ…」
一人で真っ赤になってもだえている諒に吹き出しながらも、
麻也はプロのミュージシャンの端くれとして言った。
「とにかく、この時間から真面目にやって、できるとこまでまずやろう。
とにかく俺たちが木内さんに曲提出できないと、バンドが全部止まっちゃうんだから。」
「うーん…」
「諒、何のためのメジャー契約? 」
「じゃあさ、俺が1枚目のアルバムのこの作業をきちんとやったら、
麻也さん俺と同棲してくれる? 」
「はあ? 」
すると諒は不貞腐れたように、
「最初に言ったじゃん。俺、麻也さん守るって。
仕事とかデートで一緒にいられるとき以外も、麻也さんの心も守りたいの。」
心も、というところに、少しドキッとしながらも麻也は厳しく言った。
「諒、それはありがたいけど、変な交換条件にするのはやめてくれないかな。」
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