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第5章の43
(真樹にバレませんように…)
家に帰ると、真樹が普通に朝食の準備をしていた。
後ろめたさを押し殺してさりげなく、
「ただいま。」
「あっ、お帰り。大変だったんだね。朝まで、悪いね。」
「ううん、大丈夫だよ。じゃあ、ちょっと着替えてくるね。」
急いでTシャツに着替え、ペンダントのトップは襟首に隠して食卓についたのだが…
サラダをつつき始めると、何だか真樹の視線が痛い。
「なあんだ、兄貴、ゆうべ、女の子のとこに泊まったの? 」
「えっ? 何で? 」
「首んとこ…」
自分では気づかなかったが、どうやらキスマークがついていたらしい…
麻也はうろたえてしまった。
「ま、いいけど。兄貴に春が来て良かったよ。で、どんな人? 」
言葉に困る…
「あ、明るくて、背が高くて…」
「今度紹介してよ。」
「あ…」
「何? 紹介できないの? いくら寄ってこられても人妻とかやめてよ!
そういう背徳はウチでもだめだよ! 」
そっちの背徳ではないのだが…
「違うよ、まだそんな段階じゃないんだ…」
苦しい言い訳だった。
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