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第5章の44

「…に、してもさ、諒をダシにするのは良くないよ。」 (本当はダシじゃないんだけどな…) 「で、曲は全部できたの? 」 「俺の方が煮詰まってて、近々もう一度諒のところですり合わせ。」 それを聞いた真樹が言葉をのみ込んだのがわかる。  女と会ってる場合じゃないんじゃない…?  でも、アーティストには恋愛も必要、と麻也には言ってきたのと、 曲作りの苦労を思って黙ったのに違いなかった。  その日も、真樹が直人と練習をするとスタジオに行ったので、その間に、まずは諒にメールをした。 ―昨日は本当にありがとう… (…んー、ちょっと変かな…? でも、女の子相手じゃないから…) ―曲作りがんばってます。もう少し待ってください。すみません。  返事はすぐに来た。 ―麻也さん、冷たい。俺は麻也さんのことで頭がいっぱいなのに…  仕方がないので麻也は、 ―俺も同じだよ。この思いは、シングルのB面にぶつけようかな。  するとまたすぐ返事が… ―もー、麻也さん、それなら俺にぶつけてよっ! 早く曲仕上げてまたこっちに来てよっ! 「矛盾してる…」  もう、メールをやっていると作業にならないと、麻也は返事をしなかった。 気になるので、携帯の電源も切って、シャワーを浴びた。

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