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第5章の48
おとといはあまりに申し訳なかったので、麻也は仮歌まで入れたデモテープも用意して、諒の元へ向かった。
が、真樹に「車に気をつけて」と心配そうに言われるくらい、何だかふらふらしていた。
(そうか、おとといのせいか…)
頬が赤くなるのを感じながらも、
(あれがなかったら、一晩くらいの徹夜でふらふらしないのに…)
ちょっと、情けない。
諒の部屋に着くと、諒は笑顔を押し殺した様子でドアを開けてくれた。
「ごめん。今日はばっちり用意してきたから。」
すると諒は満面の笑顔になり、
「すみませんねえ。がんばって明日は木内さんとこに行こうね、麻也さん。」
(おー、今日は諒、真面目モードじゃないか…)
と思いながら、玄関を上がったところで麻也はふらつき、諒の胸に倒れ込む形になった。
「あ…ごめん…」
「麻也さん、顔色悪いよ。ちょっと休んだ方がいいよ。」
本当に気分が悪くなったので、諒に抱きかかえられるようにしてベッドに向かい、
休ませてもらった。
「ごめんね、こんなことまずないんだけど…」
「いや、俺の方こそごめん…」
と、言いながらも、ベッドの脇に座り込んだ諒は、深く唇を重ねてくる。
「…諒…」
俺、病人なんだけどな、と思っていると、
今度は壁の方へと体を転がされてうつぶせにさせられ、
シャツをめくりあげられて、背中のホクロにキスされた。
そして、また仰向けにされると、今度はベッドの空いたスペースに諒は体をすべり込ませてきて、麻也を抱き寄せる。
「…諒、俺が回復するまで、バッグの中のデモテープ、チェックしてて…」
「ダメだよ。麻也さんが心配だもん。」
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