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第18章の32(←出稼ぎ仕事に疲れる麻也王子)

「まあ、みなさん持ちあげてくださっても、 僕はてっきり、地味なスーツにハットでもかぶって、 うつむいて演奏かと思ってたので…」  鏡に向かって座り、チークブラシに頬を撫でられる頃には、 麻也はもう、今回の仕事に諦めもついて、 具合が悪いのを隠しつつ、軽口も叩けるようになっていた。 「いえいえ、アップがいくつもあるそうですから… 腕にヨリをかけてアイシャドウも入れさせていただきますね…」 …麻也は心の中で祈った。 (…ディスグラファンのよい子のみなさん、本番は見ないでね…) しかし、もう、ファンクラブの会報で告知されていたことを麻也は知らなかった…  …凖備が終わって、麻也が鈴木と後藤に気づかわれながら休んでいると、 楽屋に鈴音とお付きのスタッフがあいさつに来た。 ...しかし、フルメークに王子シャツの麻也を見るなり、 鈴音はやっぱりファンモードになってしまい、頬を赤らめている。 それを一生懸命、仕事モードに戻そうとしているのが、可愛いといえば可愛いが... 「麻也さん、今日もよろしくお願いします。」 「こちらこそよろしくね。 今日もお互い肩の力抜いていこうね。」 …と、笑顔、を麻也は作ったが...

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