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第18章の33(←恩人と再会した麻也王子)
…それを見た鈴音の笑顔の明るさといったら...
(...あ、俺、さじ加減を間達ったみたい...)
体調の悪さを気づかれたくなくて、かえってかなり甘い笑顔を作ってしまった模様…
彼女のマネージャー達にはその様子がかなりマズいものに見えたらしく、
申し合わせもそこそこに、鈴音を連れて行ってしまった…
まあ、助かったけれど…
すると、その後に入ってきたのは、またお付きの者を引き連れたスーツ姿の、
落ち着いた雰囲気のメガネの中年の男性...
(あ…専務…)
麻也はどうしていいかわからなくなった。
が、しかし、彼の方はあたたかなまなざしで、
「MA-YA、じゃなかった、麻也くん、久し振り。」
「...伊尾木専務...」
...このプロジェクトでも、初めて会った。
…前のバンドで解雇された時、<ギターだけはやめるなよ>と言ってくれたのが、この人だった。
そして…それ以前も…
その恩人に再会できたのだ。
麻也は挨拶も忘れて立ちつくすばかりだった。
「…ずいぶん立派になって…」
「…専務のあのひと言のおかげです…」
「今度はいいバンドと事務所に恵まれたね。オリコン1位、おめでとう。」
「あ、ありがとうございます…」
何だか、こみあげてくるものがあって、麻也はうつむいてしまった…
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