164 / 1053
第5章の51
「何言ってるんだよ。いきなり諒との天国に連れてかれて、そこから曲作りの徹夜地獄に落ちたからだよ。
もー、諒ったら、前フリないんだもん。」
諒は涙目になるのをこらえるように、後ろを向いた、
それからまた振り返って、麻也を優しく横たわらせると、
「俺、あっちでデモテープ聴かせてもらってるから。作業進めておくから、休んでて。」
そして、
「バッグ、勝手に開けてごめんね。」
「いや、別に見られて困るものもないからいいよ。」
「うれしー♪ 」
ゆっくり寝てて…と諒は部屋を出て行った…
その次には諒の声で目がさめた。
諒は、電気をつけるとクリーム色のカーテンを引きながら、携帯で話をしていた。
「…だから、あした、木内さんがOKなら、二人で行ってしまおうと思ってる。
なので、麻也さんは今日、こっちに泊めるわ。
そっちに帰ってまた、とか、移動させられる感じじゃねーもん。」
どうやら相手は真樹らしかった。
「え? キスマーク? 」
面倒なので麻也は何度も、お前の、と言うように諒を指差した。
諒も素直にそれを信じ、
「あ、あれっ? 魔法の練習のせいかな? とにかく今日は真面目に作業するから大丈夫。
いや、気にしないで。気心知れた麻也さんだから。じゃあね…」
…と勝手にお泊まりが決まってしまった…
「というわけで、麻也さん、安心して♪ 」
「はあ…それは、ありがとう…」
そして、時計を見て麻也は頭を抱え込む。
「せっかく早めにこっちに来たのに…」
「うーん、責任は俺にも…って、麻也さん、頭痛は? 気分は? 」
「おかげさまで良くなったみたい。作業するよ。」
無理しないで、という言葉を、さすがの諒ものみこんだのが伝わってくる。
ともだちにシェアしよう!