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第5章の52
リビングに行くと、テーブルの上には大きめのラジカセと、
諒のギターと、
広げられたノートやスコア…には赤ペンも入っていて…
なぜか、食べかけのカロリーメイトの箱が…
「麻也さんも食う? お昼の代わりに…」
その時に、諒の携帯に、真樹のメールが着信…
「…兄貴に飯を食わせるのを忘れないで下さい。
2人とも栄養バランスには気をつけて、だって。」
「あー、真樹はオフクロに厳しく言われてるんだよ。俺のメシの監視。
俺、前のバンドから実家に帰った時、ガリガリだったから。」
「えっ、そんなに? 」
「俺、もともと仕事忙しいと、寝るのもメシもどーでもよくなっちゃうからさ。
一緒に暮らしてた恭一が、カレー作る時間があるときはありがたかったな…」
すると諒は、
「恭一さんって、ベースの人でしょ? あの人も作曲してたよね。」
「うん。」
「じゃあ、カレーなんか作るヒマなんかなかったんじゃない? 」
「はあ? 」
「誰か女の子にでも作らせてたんじゃないのぉ? 」
(また嫉妬かよ…)
「違うよ。女の子なんか呼べるような、こんなきれいな部屋じゃなかったし、
俺も恭一もそういうの嫌だから、入れなかったし。」
「ホントに…? 」
疑り深いヤツである。
「それより諒、もっと大変なことがあるんじゃない? 」
「えっ? 」
「俺と暮らしたら、キミがメシの責任者だっ! 」
すると諒は仁王立ちになり、
「望むところだっ! 」
麻也の方がびっくりしてしまった。
「大丈夫なの? 」
「ダテにかぎっ子やってねーもん。台所には真樹より立ってると思うよ。」
「そうだねえ、ウチ、オフクロは家にいたしねえ…」
(ヘコまないヤツだ…)
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