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第5章の54

 と、いうわけで、ようやく麻也もテーブルに向かった。 「あ、『てにをは』だけでこんなにヘンだった…? 」 「…うん。俺が思うには、だよ。麻也さんも俺の詞、じっくりチェックしてね。」 「…にしてもさ、やっぱ、全体的に2人の世界が違いすぎるかな…」 「…そこからですか…まあ、『世紀末の背徳の愛』ってアルバムコンセプトにしては、 やっぱ、麻也さんのはポップだよねえ…曲も詞も。」 「でも、ちょっと、親しみやすい面もないと…あと少しだけ手直しして、ジャッジは木内さんにやってもらおっか? 」 「いや、麻也さん、悪いけど、もう少し俺の方にムード寄せて。」 「えーっ! 今からーっ! 」 「メロディだけでいいから。詞は、ほら、赤で候補書いといたから。」 「うん、わかった~…」  仕方なく、諒のギターを借りてあれやこれや直してみる。 「…ねえ、麻也さん、夕飯どうしよう…? 」 「お任せ。」 「一緒にコンビニまで行く? 」 「行ってるヒマない。」 「んもー!! 手つなぎデートできるじゃん…」 そこで麻也は気づいた。 「明日、俺たちのこと、木内さんにもバレないようにしないとね。」 「えーっ、アタシ、できるかわかんないわー。」 「ま、それは諒の自由だけど。」 珍しく反論がないのは、麻也の手を止めないためらしかった。

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