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第5章の55
あらかた作業が終わったのは夜の11時。
せっかくなので、2人で手をつないでコンビニへ食料の調達に行った。
夜の街の中、2人は笑顔で、お互いの顔を見つめあった。
こんな風に、誰かと愛の言葉を交わしながら街を歩くなんて、
その相手が、すべてを受け止め、そのうえバンドのメンバーでもある諒だなんて…
作業で疲れてはいたけれど、麻也はウキウキしていた。
すると諒が、
「7枚目、くらいになったら…」
「えっ? 」
「いや、アルバムが7枚目くらいになったら、
ロンドンでレコーディングとかできるのかな、とか思って。」
「いいねえ…でも、それまで俺たちいったい何曲作るんだろう…? 」
2人で大笑いしながら店に入った。
が、明るい店内でも、諒は麻也の手を決して離そうとはしなかった。
そそくさと夕食を済ませ、シャワーを浴びると、かなり遅い時刻になってしまった。
「麻也さん、早く寝よう。明日は何としても木内さんつかまえたいし。」
と、珍しく真面目に諒がせき立てる。
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