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第5章の61

「今日はギターに触れない日か…ウチで練習か…」  曜日の感覚が無くなってきていた麻也がリビングでスケジュール帳を眺めていると、 真樹が手を合わせながらやってきた。 「兄貴、悪い、明日の晩、どっかにお泊りに行ってくれないかな。」 顏が思わずにやけそうになるのをこらえながら麻也は、 「いいけど…ああ、恵理ちゃん来るの? 」 「そーなんだよ。早上がりの明日、土曜だろ。兄貴も彼女のとことか、どう? 」 (彼女…ぷぷっ…真樹、ゴメン) 「でも、次の日、10時集合だろ? 」 「でも、明日しかないから、そこを何とか! 」 麻也は寛大なふりをして引き受けると、すぐに諒にメールをした。 ―明日の晩、泊まりに行ってもいい? ―うん、待ってる。早く仕事終わらせよーね♪  というわけで、インタビューを早く終わらせると、 麻也もどこかに行くふりをして、諒とは別に、タクシーに乗り込んだ。 諒のところに行くなんて言って、直人に「3人で飲みましょう」と言われては困るからだ。  ドキドキしながら諒の部屋のドアの前に立ち、インターホンを鳴らす。  すぐにドアを開けてくれた諒は、満面の笑顔だ。 「直人には、本命が来るって言ったの。嘘つくのイヤだったから…」 「うーん、確かに? 」 「また、そうやってイジワルする…麻也さん、ひどい。」 「ごめん。諒…」 そして、持ってきたバッグを床に置き、諒に抱きついて耳元で囁いてやる。    今夜は俺が、諒を喜ばせてあげる… 「ええーっ! ま、麻也さん…」

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