179 / 1053

第5章の66

 そうだ、自分は長い間の呪縛を諒に解いてもらったんだった。 そんなことも忘れるくらい、諒が自分を包み込んでくれてるんだった… 麻也はあふれそうな涙を見られたくなくて諒に背を向けた。  すると、諒は優しく、 「麻也さん、おしりもいいけど、ほっぺにキスさせて。」 そう言って自分の方に顔を向かせる。抱きしめて頬にキスされる。 諒は愛しそうに、涙まで舐めとってくれた…  麻也たちの宣伝活動では、インタビューだけではなく、写真を撮る機会も多かった。  が、事務所からは何も言われていないこともあり、髪型だけは統一感ゼロ…  諒はウェーブがかかったセミロングの、シャギーも入った明るい茶髪。  麻也は、胸まであるロングの、ウエーブがかかった抑えめの色の茶髪で、 「天使みたい」と周囲には言われている。  真樹はもともと短めだが、念願の金髪にし、前髪をツンツンに立てている。  直人は「ドラマーは黒のストレートのロングに限る」と言って譲らない。  そんなものだから、 「ジャンル分けができないバンドだねえ。」 と言われている。 「サウンド自体そうだしねえ。」 と、メンバーは言い、 ビジュアル系ではないので、衣装は黒の時も足の長さを強調したパンツスーツが多かった。 「それにしても、兄貴、輝いてるねえ~…」 真樹は嬉しくなる。 あの、前のバンドから帰ってきた時とは別人だと… 再デビューと、相手はわからないが、恋人のおかげだと真樹は思う。 (それにしても、どんなステキな人なのかな…)

ともだちにシェアしよう!