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第5章の67
駅にまで巨大ポスターが貼られ、タイアップこそなかったが、
ディスティニー・アンダーグラウンドのシングル「LOVELY」は満を持してリリースされた。
メンバーは、忙しさに喜んでいるヒマもないようだったが…でもようやくのメジャーデビューということで、
ライブのリハーサルの合間に、スタッフがパーティーを開いてくれた。
が、しかし、オリコンでも順位はぱっとしなかったし、宣伝の割には売り上げは伸びなかった。
また、アルバム「First」も、シングルよりも順位は上がったが、思ったほどではなかった。
「うーん、まあ、ロングセラーを狙うかなあ。メンバーの年齢の割には大人っぽいサウンドだしね。」
などと、レコード会社の担当や事務所の社長も、まあ、大目に見てくれてはいる感じだったが…
「まあ、まずはライブがんばらなきゃ。」
そう言って麻也はみんなを励まし、宣伝とライブのリハーサルに全力を傾けていた。
「とにかく動こう。インタビューももっと頑張ることにして。
テレビの話もそろそろ来てるじゃない? 」
そんな状態なので、諒の部屋に行くこともできない。
楽屋で2人きりになった時でも、誰かが入ってきてもいいように、雑誌の写真のポージングの練習を装い、
新人にしてはグラマラスな衣装のまま、鏡の前で抱き合ったり、
あとは、深夜の移動の時、バッグの陰でそっと手を握ったりするのがやっと。
ほとんどが、お互いのペンダントを確認するだけで精いっぱいの日々だった。
家では、帰宅時間が遅いので、真樹も恋人の恵理とはもっぱらメールに忙しい。
2人ともしっかり者なので危機はないように麻也には思えるのだが、
真樹はそのメールのために自室にさっさとこもってしまうので、麻也にも好都合だった。
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