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第5章の69
ライブのゲネプロ…最終リハーサルも不安のうちにどうにか過ごし…
夜遅くに麻也と真樹はへとへとになって帰宅した…が、
「兄貴、何だか兄貴まで元気ないみたいだけど、大丈夫? 」
麻也は一瞬どきっとしたが、
「そう言う真樹だってへろへろじゃん…」
「ねえ、兄貴、ほんとに数日後は俺たち地方でプロとして演奏できてるんだよね? 」
「カレンダーを信じろ。」
「何だよそれー!! 」
…と、その時インターホンが鳴った。
「はい。」
―諒です。遅くにすみません。
兄弟二人で顔を見合わせた。驚きしかなかった。
二人で玄関へ行き、真樹がドアを開けた。
「諒、どうしたの? 」
すると、180センチを超える美丈夫が、入ってくるなりわっ、と泣き崩れるようにして、いきなり土下座だった。
「申し訳ありません! 俺、俺…」
嫌な予感に、麻也は思わずその場に座り込んだ。
「結婚することになったんです! バンドに迷惑かけてすみません! 」
(えっ…ケッコン、て…)
麻也には何のことかわからなかった。
「え…えーっ? ケッコン? お前が? 」
真樹が倒れそうになりながら返事をしているのを感じる。
そして三人とも一瞬、無言になった。
「や、ごめん、俺たちにはびっくりしか…」
と、どうにか口を開いたのは真樹だった。そして、
「事務所には言ったんでしょ? 」
「はい。あした、社長からメンバーには正式に話すって言われたんですけど、
俺、まず麻也さんに謝りたいと思ってそれで来ました。
麻也さん、せっかくの再デビューに傷をつけて…」
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