184 / 1053

第5章の71

(何だよ、これ…)  突然のことに、麻也も収拾がつかない。    諒がまだ同じ屋根の下にいるのも気になるが、どうすることもできない。  部屋をうろうろしていると、そのうち真樹がノックしてドアを開け、 「兄貴、俺、諒送ってくるわ。遅くなるかもしれないから、寝てて。」 「あ、ああ。」  麻也の様子にはあまり構わず、真樹はドアを閉めた。2人が出ていく気配がする。  家に一人になって、ようやく麻也は少し落ち着いた気がした。  しかし、それにしても… (真実はどこにあるんだろう…)  その女とどうしても結婚したかったから、でもクビは嫌だからデビューが確定するまで待った、ってこと? そして、それにあわせて計画的に…妊娠…さ…いや、した、ってこと? あの涙も全部ウソ?  それは… (いちばん文句を言いそうな俺の口を封じたくて…) …俺をだましたって…こと? それともカモフラージュ用?   それで、実際に手を出してみたら、思いのほか簡単に俺は引っかかって夢中になり… 格好の、同性愛の実験材料になったってこと…?    麻也はアマチュアの頃の「諒の引き抜き事件」を思い出していた。 あの時は追及はムダと、グレーのまま、でも諒を信じることにしたのだった。 (でも諒は、あんなに情熱的に…だったのに…)

ともだちにシェアしよう!