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第5章の71
(何だよ、これ…)
突然のことに、麻也も収拾がつかない。
諒がまだ同じ屋根の下にいるのも気になるが、どうすることもできない。
部屋をうろうろしていると、そのうち真樹がノックしてドアを開け、
「兄貴、俺、諒送ってくるわ。遅くなるかもしれないから、寝てて。」
「あ、ああ。」
麻也の様子にはあまり構わず、真樹はドアを閉めた。2人が出ていく気配がする。
家に一人になって、ようやく麻也は少し落ち着いた気がした。
しかし、それにしても…
(真実はどこにあるんだろう…)
その女とどうしても結婚したかったから、でもクビは嫌だからデビューが確定するまで待った、ってこと?
そして、それにあわせて計画的に…妊娠…さ…いや、した、ってこと?
あの涙も全部ウソ?
それは…
(いちばん文句を言いそうな俺の口を封じたくて…)
…俺をだましたって…こと? それともカモフラージュ用?
それで、実際に手を出してみたら、思いのほか簡単に俺は引っかかって夢中になり…
格好の、同性愛の実験材料になったってこと…?
麻也はアマチュアの頃の「諒の引き抜き事件」を思い出していた。
あの時は追及はムダと、グレーのまま、でも諒を信じることにしたのだった。
(でも諒は、あんなに情熱的に…だったのに…)
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