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第5章の74

「諒はね、良くわからない言い分なんだけど、 本命に告白するべきか迷って、何か取りあえず、 彼女を何人も作ったらしいんだ。その一人がまあ今回の結婚相手なんだけど…」 例の清算の後は、2人はきれいさっぱり別れ、お互いの新しい恋人とつきあっていたが…彼女が体の異変に気づき… 「向こうの親が、諒の実家に電話してきてそれを聞いて諒も初めて知ったんだって。」 気づくのが遅かったために、もう産むしかない時期にさしかかってしまい… 「今の彼氏も若くって、連れ子は困るけど将来は結婚したいって思ってるらしくて…」 「…はあ…」 「だから、諒と彼女をバツイチにしないために、諒が認知だけするっていう案もあったらしいんだけど、 そしたら赤ちゃんはやる気のない母親のもとに残っちゃうから… で、2人の家族で話しているうちに、諒の両親が育てることになって、 諒のお父さんが『これ以上孫が不幸になるのが耐えられない』って、 戸籍上、若い二人を結婚させることにしたんだって。」 「…ふーん…」  麻也は、その赤ん坊を含め、関わる人みんなが不幸に聞こえ… それで少し溜飲が下がった…気がするのか…? (そんな俺って、人間としてどうなんだよ…) (…俺が…妊娠できればよかった…のか…?) そういう問題じゃない。  でも、そうは言っても…いざ子供が生まれてしまえば、元は恋人だった同士、 諒と彼女も幸せな夫婦になってしまうかもしれないし… 結局、麻也にはどうすることも…麻也は真樹にカマをかけた。 「…本命さんの…妊娠だったらよかったのにね…」 「ムリだろうよ、兄貴…」 そのキツい口調で麻也は確信した… 真樹はもう、諒と兄の関係を察してしまったのだろう。 そのショックだってあるだろう。 そして、その秘密を墓場まで持っていく覚悟も決めたのだろう…  そうなると、直人の手前はどうなるのだろう。    あと数時間で事務所のミーティングが始まるのに…

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