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第5章の75

「…俺が聞いた話はこれで終わり。今後どうなるのがいいのかは俺にもわかんねえよ。」  そして、ちょっと仮眠する、と言って真樹が部屋を出て行ったのを見計らって、 麻也は毛布から顔を出した。 「あ…ペンダント、外さなきゃ…」 諒につけてもらってから、肌身離さずつけていたペンダントの留め金に手をやった。 が、なかなか外れなくて苦労した。  でも…不倫は嫌だった。  というか、気持ちに整理がつかない。ミーティングまでに、きれいさっぱり諒との事は忘れていないといけないのに…  でも…真樹の今の話を聞いた限りでは、諒も少しは自分のことを好きでいてくれたのかもしれないと思った… 2人がウソをついていなければの話だが…  ペンダントはアクセサリーケースの奥にしまっておくことにした。  もう二度と…人を…愛することなんてないと思うから…人生の…記念として…  涙があふれてくる。 「ああ、それから兄貴さあ…」 「! 」 珍しくノックなし! で、疲れ切った真樹が部屋に入ってきたのだ。 「明日、ってかもう今日だけど、諒に、職場の先輩として、何か優しい言葉をかけてやってくれないかなあ。 兄貴に怒鳴られて、諒、すっかり萎縮しちゃって、可愛そうで…」 「た、例えば? 」 「うーん、ツアー頑張ろうね、とか。あと、もう悪魔の魔法はやめにしたら? 」 「えっ? 」 真樹は目をそらして続ける。 「…もう、俺たちもプロだしさ、ああいうのは…」 やっぱりさとられてるな、と思う。 でも、麻也はふと思ったのだ。 (諒は俺を裏切っても、東京ドームは俺を裏切らない…?) でも、 「ああ、考えとく…もう休んでよ。すぐご出勤じゃん。」 「ああ、兄貴もね。重役出勤になっちゃ大変だ。」 …とこの4時間後、2人は、合鍵を持ったマネージャーにたたき起こされる「芸能人出勤」となってしまったのだが…

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