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第5章の79
楽屋でばたばたしているうちに、本番の時間…
オープニングのSEは、グラムロックの大御所T―REXの「グル―バー」。
グル―バーというのはスラングで「イカしたヤツ」というなのだそうで、みんなで決めた。
派手で、期待感をあおるにはふさわしい曲だ。
客席の歓声が、楽屋口にも伝わってくる。
4人は円陣を組み、掛け声とともに散って行った。
ステージに上がると予想以上に客席は熱い。
まだ暗い中、ギターのストラップをかけ、麻也も定位置に着く。
SEがやむ。
直人のカウント。
スポットライトがつく。メンバーの姿が浮かび上がる。
「キャー!!! 」
あっという間に爆音は鳴り響き、客席を踊らせている。
真樹のベースの重低音。
麻也の華麗なギター。
ようやくメンバーの姿がファンは直視できる。
スタンドマイクを握り、豊かな声と美貌で客席を圧倒していくのは紫のスーツのディスグラの看板ボーカリスト・諒…
(このライブ、もらった!! )
麻也にはこの一発目の空気でわかった。
1曲目から前に出て、客席を目でも挑発しながら、客と一体になっていく。
「MA-YA! 」
「麻也さーん! 」
客までの距離が近いので、どれほど自分たちが求められているかわかる。
麻也は、ギターが触れられないぎりぎりまで前に出ながら、客をあおる。
客の入りは8割といったところだが、後ろまでびっしりと両手を上げ、みんなが踊ってくれている…
CDの売り上げの割には沸騰している…
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