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第5章の80
観客の熱狂ぶりはかなりのもので、もう2曲目で麻也は他のメンバー達にも笑顔を見せていた。
メンバーたちも手ごたえを感じているという笑顔で返してくる。
すると麻也はまた客の方に向き直り、これまでのように大きなアクションで弾きまくる。
(俺は、このために生きてる…)
どんなつらいことも忘れて、麻也は全身全霊でそう感じていた…
中盤、スローな「LOVELY」では、観客は諒の歌唱力にうっとりしながらも、
メンバーのフォルムの美しさにも見とれているようだった。
ギターソロでスポットライトが当たると、白いフリルシャツの麻也の、黒のパンツのスパンコールの輝きも美しい。
そして、アンコール前が、アマチュアの時からやっている例の曲「マジェスティック・クラウド」だ。
明るく派手な曲で、歌詞は男の子同士の恋愛がモチーフなので…間奏部分で悪魔の魔法が発動される…
思えば今日は実際のキスのリハーサルをしていない…諒のリードに任せるしかない。
曲が始まると、曲調の明るさに、会場全体が笑顔になり、リズムを刻み始める。
歌いながらの諒の動きは、手足の長さのおかげで本当に美しい。
そして、メンバー紹介を兼ねた間奏はギターソロで始まり、
諒が背後から抱きついて愛撫してくる…最前列のファンたちが目のやり場に困っているのを感じるが…
(…もっと…見て…)
と、麻也は目で誘う。
そして、打ち合わせ通り、麻也からはキスはせず、諒がまた前に回り、
麻也のあごをとらえて、客席に見せびらかしながら唇を重ね、舌も深く絡ませ…
客席から女の子たちの悲鳴があがる。その間も、麻也の指はトレモロを奏で続け…
ようやく諒から解放される。すると諒が叫ぶ。
「メンバー紹介します! MA-YAちゃんが、あのMA-YAちゃんが、
パワーアップしてディスグラの麻也ちゃんになりました!」
「キャーッ!! 」
「ディスグラの長老、ギターの王子! オレの恋人です! ギターの麻也~!!! 」
「キャーッ!! 」
麻也は誘うように、舌なめずりしながら流し目…そしてギターはこの熱い空気をも切り裂いていく…
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