194 / 1053

第5章の81

「おつかれ~!! 」  スタッフとは笑顔でハイタッチ…したが、 最後に楽屋に戻った麻也の目に飛び込んできたのは、 転がったりしゃがんだりの3人の姿だった。 「おつかれさまです、麻也さん…」 「2回目のアンコール、ミスった~…」 「プロのライブだったね…兄貴…」 そして3人はどうにか立ち上がると、麻也に向かって、 「ホントに今日までご指導ありがとうございました! 」 とお辞儀をしてきた。が、麻也はニヤリと笑い、 「まだまだこんなもんじゃないよっ! 」 「ひょえ~っ!! 」  …と、その時、麻也は、諒の襟元に光るものに気づき…  …それはあの、麻也が贈った「天使のブレスレット」のチョーカー…  麻也は一気にライブの昂揚感から、厳しい現実に引き戻された…  …その一方で…諒の気持ちも伝わってきて…つらい… 「MA-YA、おめでとう! 」 「麻也ちゃん、ありがとう! 」  ライブハウスの外に出ると、出待ちの数がすごかった。 マネージャーたちが手紙やプレゼントを押し付けられていく。  メンバーはすぐにワゴン車に乗せられ、打ち上げ会場の居酒屋を目指す。  何台ものタクシーに追われる。追っかけの子たちだ。諒たちには新鮮な眺めのようだが、麻也にとってはほろ苦い光景だ。  諒のチョーカーを見たせいで、ライブの疲れというより例の事件の疲れがどっと出てしまった麻也は、このままホテルに帰ってしまいたいような気がした。  が、仕事上のつきあいを考えるとそんなわけにもいかず、麻也は車を降りると店に入った。

ともだちにシェアしよう!