196 / 1053
第5章の83
そんな状態でも、次の日は地元ローカルの取材がいくつもあった。
ラジオでは、らしくもない失敗をしてしまった。
諒の背中を見ているうちに、心ここにあらずで、DJの質問を聞き逃してしまったのだ。
「長老、聞いてる? 」
「おじーちゃん、答えて! 」
「この人ギター持ってる時だけカッコいいんですよ。」
3人のフォローでどうにか乗り切ったが、諒の「ギター持ってる時だけ」発言はあんまりだと思った。
でも、生意気な諒は久しぶりで、麻也には懐かしかった。
「麻也さんは花のように微笑んで、何にもしゃべらない方なんですね。」
というDJのツッコミに、
「いえ、他の3人がおしゃべりなんでボクは…」
と、答えるしかなかった。
実際そうなのだが、やっぱり突然の失恋がこたえていると思う。
そしてその相手とずっと一緒にいて、ステージの上ではキスまでしなくてはいけないのだから、
ライブに夢中な時間以外は地獄のようだった。
これが「悪魔の魔法」の対価なのかもしれない、と麻也は思い始めた。
ならばもう自分はこんなにつらい対価を払っているのだから、東京ドームにはいかせてもらおう、そうも思った…
(この章終わり)
ともだちにシェアしよう!