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第6章<血とバラの日々>の1

 プロとしてはどうだったんだろう… ツアーを終えて、麻也は落ち込むことしきりだった。 東京に頻繁に戻りながらの短いツアーとはいえ、麻也は、落ち込みと不眠でずっと苦しんだ。  それに加えて、ラストの東京でのホールライブの時は、風邪で熱があるのを押してのライブになってしまい、 コーラスがほとんどできなかった。  どうにかいつものように大きく動きながら演奏はしたが…  諒とのキスについてはほとんど覚えていない…いや、それは嘘だ… 具合が悪い自分がハズしたら困るから、横からの頬へのキスにしたのだ…  どうにか演奏を続けようと、自分を奮い立たせるため、満杯の客席によく目をやった… ファンの喜んでいる姿が見られたから、アンコールまで頑張れた気がする… 「兄貴、病院に行った方がいいんじゃないの? 」  毎日、青白い顔をしてふらふらしている麻也を見かねた真樹に言われた。 「兄貴はメジャーの経験者だから、バンドのアラが見えちゃっていろいろ考えちゃうんだろうけどさ、 眠れないのはつらいだろうよ。」  諒とのことには、さすがに触れてこない。 「でも、病院になんか行くヒマないよ。今日だって取材だし。」 「でも写真は別撮りだろ。インタビューは俺たちで何とかするし。 ギターの専門誌じゃないんだからさ。」 「そんなわけにはいかないよ。」 と、せっかくの真樹の提案もはねのけて、麻也は仕事に向かう。

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