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第6章の2
「よっ! 」
次の日、次の10か所ツアーのリハーサルの休憩時間に、
事務所の高橋社長が、シュークリームの差し入れを持って現れた。
そして最初はたわいもない話をしていたが、
「麻也、ちょっと。」
と廊下に呼び出された。
「麻也、体調が戻らないって聞いたけど…」
麻也は何と言ったものか一瞬とまどったが、
「すみません。体調管理もできないなんて…プロ失格ですよね…」
「いや、スケジュール詰め過ぎたしな。バンドの問題点も麻也には見えて、
他のメンバーより気疲れもするんだろうし。」
そして、
「病院を予約してきたから、須藤君と行ってくれ。」
「社長、それは…」
諒に対して負けを認めたようで嫌だった。しかし社長は、
「ん? なんだよ。」
「嫌です。」
「どうして? こんなにふらふらしてるのにか。」
「…こんな自分が申し訳なくて…」
すると社長は語気を強め、
「君はバンマスのように大変で、他のみんなの分、疲れてるんだ。
何も恥ずかしいことじゃない。頼むから行ってくれ。
プロだと言うなら、治すことに努めてくれ。」
なぜか涙があふれてくる。
それを限界と見た社長は、須藤を呼びに、また部屋へと戻って行った。
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