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第6章の11
そして2回目の10か所ツアーの初日…その会場は地元でも2番目に大きいホールだという。
ステージの広さは動きやすかったが、いざライブが始まると、
やはり初めての客が多いらしく、ノリはイマイチだった。
ステージの上でお互い、アイコンタクトを取り合う。もっとあおって、と。
諒との絡みもちょっと長めにしてみた。
そして、諒にベロベロ首すじを舐めあげられてからのディープキス…
女の子たちからの悲鳴がいつもより大きい…
アンコール前、楽屋にいったん戻ると、
「今のチューで流れが変わりそう。」
「ホントに。ようやく客席の動きがよくなった感じ…」
アンコールは「ディスティニー」で最高潮を迎え、
二度目のアンコールでは「LOVELY」でしっとりとまとめあげた。
ライブの終了を告げるSEは、木内が提案してくれた「ディスティニー」のピアノバージョンだった。
これは、ライブが終わって夢から覚めざるを得ない観客も、大喜びしてくれて、
後に、CD化されないのかと多くの問い合わせを受けることになる。
打ち上げもそこそこに済ませると、メンバーは麻也と真樹の部屋で反省会だった。
「やっぱ、『ディスティニー』目当ての客が多いね。」
「ま、それは仕方ないんじゃない。名刺がわりということで。」
「明日もこんな感じになるのかなあ。」
「でも、チケットの完売はありがたいと思うよ。」
諒はちょっと困ったように、
「難しい。初めての客をこっちの世界に持ってくるのが。」
「インパクト勝負しかないかもしれない。せっかくセットも派手だし。
とにかく今回は印象付けるってことで。
じっくり楽しんでもらえるのは次回でも仕方ないかも。」
麻也の言葉にみんながうなずいたところで、部屋のそなえつけの電話が鳴った。
真樹が出ると、初日が見たいとついてきた社長からだった。
「あ、はい…みんな、社長が社長の部屋で飲み直さないかって。」
麻也の胸にトラウマがよみがえる。
諒と直人はすぐうなずいたのに、麻也はそっぽを向いた。
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