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第6章の12

「兄貴? 兄貴は? 」 「俺はいいよ。」 「何で? 曲? 」 「いや、寒気がするから。風邪かもしれない。」 それで、3人で行きます、と返事をして、真樹は電話を切った。 「大事にしてね…」 「それではごゆっくり…」 と、みんなを送り出すと、麻也は大きくため息をついてベッドに座り込んだ。 真樹には悪いが、横になろうと思った…その時、チャイムが鳴った。 ドアを開けると、真樹と社長だった。 社長はおどけているのか、昭和のサラリーマンのように頭にネクタイを巻いていた。 それを見て麻也は吹き出してしまったが、 「兄貴、俺、風邪薬持ってきてたんだよ。」 「具合どうだ? 病院行くか?」 「病院までは大丈夫です。」 「そうか、頼むよ、倒れないでくれよな。」 ほら薬、と真樹にミネラルウォーターと一緒に薬を渡され、仮病とは言えず、仕方なくのんだ。 「じゃあ、おとなしく寝てるんだよ…」 二人に言われ、麻也はおとなしくベッドに入った。  そのあとで、社長を疑ったのは悪かったな、と少しだけ後悔した。

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