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第6章の15
そこにトリから2番目のバンドが通りがかり、
「再デビューのヤツは何でもするなあ! 」
「女受けしようと思って、気色悪っ! 」
と、捨てゼリフを残して去って行った。
それを聞いた諒は、今にもつかみかからんばかりの表情を見せたが、
心配そうな麻也の目に気づいて立ち上がるのをやめ、
彼らの背に向かって、小さな声で言った。
「キミタチに来年はないよっ! 」
麻也は大笑いした。
が、麻也の笑いが収まると、二人はまた話題に困り、
さらにはどうしてか、諒の目が泳ぎ始めている。
「どうしたの、諒?」
「麻也さん、あのね、そのうち社長から話があると思うけど…」
次の言葉が恐ろしかった。麻也は固唾をのんだ。
諒は麻也の耳元に口を近づけてくる。
そして、麻也は信じられない言葉を聞いた。
「…俺、離婚したの…」
「ええっ…? 」
麻也の頭の中は真っ白になった。
「でも、まだ、まだ、1年…? 」
あわてて麻也は声をひそめた。
「…1年経った? 」
すると諒はそれには答えず、小さな声で、
「いろいろ、ね、あったから…」
それ以上のことはそこで訊けるわけもなく、
麻也も諒も須藤に呼ばれ、次のスタジオへの移動となった。
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