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第6章の20

 確かに一人でだったら、ボーカルの諒の方がはるかにアピール効果は高いだろう。 でも、みんなのオフが欲しくて、麻也は言ってみた。 「でも、俺だけの特集とかってだめでしょうか? 提案だけでも…」 「それがダメなんだっ! 」 珍しく社長は語気を荒げた。 「一生懸命、俺たちが止めてるんだ! 魔夜姫のヌード企画をっ! 」 一瞬の間。そしてメンバー全員で爆笑した。が、社長は、 「笑い事じゃない! 音楽雑誌やそうでないのも何誌かで企画を出してきてるんだ。」 と、メンバーにいくつもの企画書を手渡す。 そこには、麻也を女装させたいとか、脱がせたいとか、 女性誌の恋人風の写真を撮りたいなどが書かれていた。 「この女性誌ならいいんじゃない? 脱がなくていいし。」 「だったら先に諒を出したいんだよ。」 と、社長が言うのはもっともな話だった。 「兄貴、女装ならいいんじゃない? 実績もあるし。」 「実績…? 」 みんなにミスターO高校の女装大会優勝の過去をバラされてしまった… 「へえ、少年野球で、ピッチャーで4番までやってたヤツがねえ…」 と社長が言えば、諒が、 「小川ベアーズ、不動の4番・遠藤麻也、2回戦には行ったことがありません。」 「うるさいなあ…」 「真樹はさらにキャプテンまでやったんだよな? 」 「さらに決勝まで行ったんだよな? 」 「もう、うるさいって…」 「でも兄貴、脱ぐのもさ、音楽雑誌だから大丈夫なんじゃない? 」 「それがさ、『魔性の天使』って意味わかんないだろうがよ。」 と社長が言えば、みんなまた大笑いして、 「それって『堕天使』とどう違うの?! 」 社長が軽く咳払いをし、話を元に戻した。

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