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第6章の22

 久しぶりに4人になった打ち上げ帰りのワゴン車の中で、みんな酔っている中、 直人が大笑いしながらそんなことを話してくれた。   真樹も少し笑っていたが、麻也の隣に諒は麻也の手を離し、作り笑いをしていたと思う。  調子に乗った直人が、 「両刀だったら諒だよなあ。同好会で俺、聞いたよ。」 「そんなの、歌詞だけだよ。」 諒はボソッと答え、 直人が笑うと、真樹が、 「どうしてみんな両刀にしちゃうかなあ…」 諒にも麻也にも言葉はない。あれは過去のあやまちなのだ。 が、ごまかしたくて麻也は言った。 「そういうリズム隊も危ないよ。ファンは男が多いじゃん。」 すると直人は、オトコに走るなんて絶対ないと言って笑う。 「それより武道館、楽しみだねっ! 」 麻也が明るくそう言うと、3人はあわててかぶりを振る。 「楽しみなんてレベルじゃない。楽しみだって言い切れる麻也さんについていくばかりですよ。」 「兄貴は経験あるんだっけ? 」 「あったら今頃ここにいないよ。」 諒がようやく口を開く。 「とにかく怖い。怖い。のまれそう。ここでだから言えるけど。」 弱っている諒をからかいたくなって、麻也は、 「じゃあ、のまれない魔法を俺がかけてやるよ。」 「どんな魔法ですか? 」 「それは部屋に来てのお楽しみ。」 「諒、気をつけた方がいいよ。兄貴は絶倫姫って呼ばれてるんだから。」 「何、その『絶倫姫』って!」 麻也が叫ぶと、真樹は笑いながら、 「えっ、知らないの? 大阪のスナックの人が教えてくれたよ。 前のバンドで、兄貴が両刀で毎晩すごいのなんのって…」 「えーっ、無実だよぉ…」 ようやく諒が笑ったのを見て、麻也はほっとした… いや、諒が部屋に来てくれるチャンスだったかもしれないのに… そして諒が、今回のシングルカットをこころよく思っていないのかどうかを確かめることもできなかった。 もっともそれは、確かめない方が良かったのかもしれなかったけれど…

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