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第6章の29

 ドアを開けると、そこには苦しげな表情の諒が立っていた。 「諒…」 「約束通り、1年で帰ってきました。」 約束って…そりゃ真樹は言ってたけど… もう、諒の方の立場は変化してるじゃないか…  すると諒は、今にも掴みかからんばかりの勢いで、 「麻也さん、俺たち、やり直せないですか?  俺、ずっと麻也さんのことだけ、想ってた。」  ずるい言い方だと、麻也は思った。いったいそれはどっちが決めるのだろう。  バツイチだって、子供のための復縁だって充分ありうる。 そのチャンスを断ち切るのも、復縁の際にまた捨てられるのも、 どちらもごめんだと麻也は思った… でも、それはまだ諒を求めてるってことで… 「麻也さん! 」 麻也は決心した。そして、諒の目を見据えてこう言った。 「諒、それは諒が決めることなんじゃないの? 」 「…」 思わず、叫んでいた。 「そんなに俺が欲しかったら、今ここで抱けよ。抱いてみろよっ!」 自分の言葉が聞こえると、あさましく響いて、後悔した。 しかし、それを聞いた諒は、あっという間に襲いかかってくたのだ。 思いが乱れたままの麻也はそれをよけようとして、 バランスを崩して転びそうになりながらもどうにか自分の部屋に飛び込んだ。 しかしドアは閉められず、そのドアから諒も部屋に入ってくる。 狭い部屋にはもう逃げ場はなく、麻也はベッドにぶつかると、 その上に腰を下ろす格好になり…諒に押し倒されていた。  でも…必死で唇を守る…

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