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第6章の34
本当に、何回イったんだろう…
麻也は少しの間、意識を失っていたらしい。
気がつくと、隣に諒はいなかった。
でも、自分の体に残る諒のキスの感覚や、
自分の…中に残るうずきや、流れ出た、諒のほとばしりの名残りはあって…
さっきまでのことは現実だったとわかるのが…悩ましかった。
(でも…本当はもっと…諒に抱き締められて…)
本当に抱き締められていたい…自分の本心が嫌になるが…
それにしても諒は…脱ぎ捨てた服は床に落ちているし…
(諒…もっと、欲しいよ…)
もう、こんなに体は疲れ切っているのに、と自嘲したところで…
キッチンの方で物音がした。
びっくりしたが、体が思うように動かず、這うように部屋のドアまでたどりつくと、
どうにか立ち上がれたので、そろそろとキッチンに向かった。
…と、キッチンにいたのは、包丁を持って仁王立ちになった、素っ裸の諒だった。
それを見ても、麻也には殺されることの恐怖はなかった。
諒の方もそうなのだが、以前、自分も女に包丁で刺されそうになったことがあるからかもしれない。
何より、諒の手にかかるのならばいいと思ったからかもしれない。
ただ、諒がケガをしないでくれるといいのだが…とは思った。
しかし、麻也の姿を見て、諒が言い出したことは意外なことだった。
「わかった。麻也さんが許してくれないなら、前に言った通り、
俺、腹切って死ぬわ。死んでお詫びさせてもらうわ。」
麻也は真っ青になったが、まずは誤解を解かなければと、
「諒、お前の愛情とか誠意が変わっていないことはよくわかったよ。
嬉しいよ。俺たちのことは嘘じゃなかったってわかったから。」
「…」
「ただ、もうお前、子供さんいるじゃん。それなのに俺を選ぶことが、
俺には許せないんだよ…」
「だからどうして! 」
麻也は、初めてキスした時と同じ悔しさとさらに加わった無力感から、
涙があふれてきたのを感じながら、
「これからお前が恋愛するなら、子供さんの母親になれるような、
女性であるべきだろ…」
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