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第6章36

「大恋愛を恥ずかしいとは思わない。」 「諒…」 諒は真剣な表情で、麻也の目の前にしゃがみこむと、 腕をまわしてきてしっかりと抱きしめてくれた。 (この諒が欲しい…できることなら取り戻したい…) 麻也は切実にそう思った。しかし… 「諒、俺のこと嫌いって言ったじゃん。」 「えーっ、言ったことないよ。」 「過去にこだわり過ぎるって…」 「ああ、なんだ、仕事の時の話? あれは仕事上の生意気。 先輩に向かって言いすぎました。ごめんなさいっ。」 さっきだって…ヒットメーカーとかなんとか…と言いたいのを麻也はのみ込んだ。 「…でも…俺たち…これじゃあ、人としてどうかと思って…」 「どうして…? 」 「だって、諒が結婚している間も、片思い同士とはいえ、想い合ってたんだよ。 不倫と同じじゃん…」 「でも、俺と大翔の母親とは結婚前から関係は破たんしてた… って、麻也さん、やっと白状してくれたね。 ずっと俺を想ってくれてたって…」 「あっ…」 「嬉しい…」 ようやくかつての優しい諒に包まれる…それでいよいよ麻也も覚悟を固めた。 「諒…一緒に地獄に落ちる覚悟はある? 」 「あるけど…なぜ地獄? 」 「子供とも暮らせないのに、暮らさせてないのに… こんな…いけない恋愛に溺れて…罪深いよ…」 「…いけない恋愛かなあ…麻也さんがそれを地獄と呼ぶなら、俺は構わない。 一緒に地獄に落ちよう。」 「うん。落ちよう。」 麻也はやっと諒の背に腕を回した。

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