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第6章の41

 すると諒はその木製のケースを、麻也の横に置いて、次々と引出しを引っ張り始めた。 「いいよ。俺がやるよ…」 「あったー! これだ…」 そして、麻也の体を起こすと、後ろ髪をあげ、うなじにキスして… 「…あん…」 「うふっ♪ 麻也さんここも弱いな。はい、ペンダント復活…で、ベロチュー…」 と、麻也は諒の唇を受けた。 「これ、仕事の時もつけていい? 」 と言ってから、真樹に気づかれたら…とも思ったが、たぶん大丈夫だと思う… 「もうお互いこれはずっとつけてようよ。コーディネートもこれ中心で、ね。」 そう言いながら、諒は麻也の横に腰を下ろすと抱きついてきて、額と額を合わせてきたが… 実は、諒の瞳からは涙があふれていた… 「はー、ここまでくれば安心だ…」  両手に大きなバッグを提げてくれた諒と一緒に、諒に部屋の玄関に入った瞬間、 麻也は相づちをうつ元気もなく、座り込んでしまった。 「麻也さん、ベッドまであと少しだからがんばって。 今日は着衣のままの静養でいいですから…」 ほんとかなあ…と吹き出しながら、麻也はベッドまで連れて行ってもらい、横になった。 相変わらず、この2人には狭いシングルベッドだが… 「誰か寝かせるのは麻也さん以来だから安心して。」 「うん。」 悲しいことを思い出したくなくて、麻也はそれ以上何も言わなかった。 とにかくだるい。 (…安心して、熱でも出たのかな…) でも、懐かしい諒の部屋で、麻也はようやくこれまでの苦難から解放された気がして嬉しかった… (…でも、スケジュールは変わらないんだよなあ…)

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