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第6章の42

 すると、シャンパンを冷蔵庫にしまって戻ってきた諒は、 心配そうにベッドの端に腰掛けた。 「麻也さん…」 「どしたの…? 」 「うーん、諒クン、強引過ぎた? 浮かない顔してるけど…」 「いや、しつこいようだけど…」 「なあに? 」 「明日も諒とこうしていたいな、って。仕事やだな、って。」 諒は大笑いして、 「社長に、あんなカッコつけるからだよぉ…」 「だってこんないいことあると思わなかったんだもん… そういえば、諒、よくあの部屋に来られたね。 真樹がいるかも、って不安はなかったの? 」 「えっ? だっておととい引っ越しだって、みんなに言ってたじゃん。」 「…に、してもさ…」 「俺、本番に強いもん。」 と諒は笑うが、目は笑っていない。 諒にとっても危険な賭けだったとあらためてわかる。 「麻也さんこそ、お薬のこと、心配だよ。」 「それは…これからは諒がいてくれるから大丈夫だってば…」  すると、諒は、 「本当にごめん…一生かけて償うから…」 と、麻也の手を強く握ってきた。 「諒…」 麻也もその手を強く握り返した… 幸せだけど、この幸せは片時も目が離せないな、そう麻也は思った…

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