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第6章の45
美味しい料理とワインを楽しんでいるうちに…やっぱり麻也は諒の気持ちが心配になっていく。
本来ならば、「現場についてきてくれて嬉しかった」くらい言うべきなのだろうが、
諒があの話を思い出すと困るので、麻也はそれを言うことが出来なかった。軽口でごまかす。
「諒、俺たち出世したね。前は同じイタリアンでもファミレスだったし。」
それを聞いた諒はにっこりして、
「そうだね。俺がグラスワインでクダ巻いたこともあったよね。」
「そうそう。」
「でも、あのときは本当に苦しくて苦しくて仕方がなかったんだよ。
麻也さんへの想いはつのるばかりなのに、嫌われたら困るから隠すしかなくてさ…」
「でももう隠す必要ないじゃん。どんどん見せてよ。」
「もう、麻也さんたら大胆なんだから♪ 」
「そう? 」
諒も今日の仕事のことはあまり触れてこなかった。
それよりも、これからの引っ越しのことばかり話していた。
「真樹にもらったパンフ、いい感じだよ。夜でもやってる引っ越し屋さんの。」
「俺、麻也さんと家具見に行くの楽しみ。」
そう言われて、麻也も同棲することの実感がわいてくる。
…そして、部屋に帰るとすぐに諒は抱きついてきた。
「もー、諒ったら…」
と、言いつつ、麻也は内心、ほっとしている。諒は不審にすら思ってないんだ…
「何のために一緒にいると思ってるの…それに麻也さん、さっき言ってたじゃん。
俺の気持ち、どんどん見せてって。」
「そうだけど…」
そんなことを言いながら、唇を奪われる。ベッドルームに導かれる…
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