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第7章<すべてはオールライト?>の1
「麻也さん、麻也さん、起きて。」
諒の声で、麻也はびっくりして飛び起きた。
「遅刻しちゃうよ…」
どうやら自分は少しは寝ていたらしい。
家から持ってきた服をあわてて身に着け、
諒が用意してくれたコーヒーとクロワッサンを流し込み、
また別々のタクシーで事務所に向かう。
今日はみんなのオフ明けで、会議室で武道館の反省会から始まるのだ。
(せっかく初めての朝なのに…諒との朝食も楽しめなかったな…)
タクシーの中で、ちょっと寂しくなる。
久しぶりにみんなと顔を合わせたが…誰も…真樹でさえ諒とのことは気づかれなかったようで、
麻也はほっとしている。
昨夜打ち合わせた通り、諒も平静を装っている。
会議室に美術監督たちまでが揃うと、社長に意外なことを言われた。
「じゃあ、次は東京ドームを目指すって観点で、反省をしていきましょう。」
えっ? とメンバーが怪訝そうな顏をすると、
「みんなまだ疲れてると思うけど、武道館がゴールじゃないから。
そのことを自覚してもらいたいと思うんだよね。
実際、燃え尽きちゃう例も、俺は聞いてるし。」
「あと、今の4枚目のシングルのプロモーション計画ももう一度確認してください。
あと、武道館のビデオのプロモーションと、次のアルバムの計画も。」
レコード会社の制作部長が張り切って言う。
「東京ドームでの舞台のイメージ図を持ってきたんですが…」
美術監督が言えば、社長は、
「あ、それは励みになるなあ。ぜひ全員に見せてください。」
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