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第7章の3

 しかし、現場の合間、移動のワゴン車の中で須藤に言ってみたところ、 あっさりと却下されてしまった。 「だめですよ、そんなの。アーティスト同士なんてただでさえケンカが多いでしょう?  無理に一緒になんか暮らさないで、スープの冷めない距離くらいにしてくださいよ。」 「いや、でも、俺たちいっぱいいっぱいで…」 「麻也さんにそこまで言われると困るなあ…わかりました。社長に相談してみます。」 それはちょっと…と2人は思ったが、今さら仕方がなかった。  社長に呼ばれたのは次の日の夜だった。 「何でまた二人暮らしなんだ? ケンカからバンドにひびが入ることもあるから、やめてほしいんだけどな。」 社長は本当に嫌がっている様子だった。 仕方なく麻也が、表向きの理由を話したが、やっぱり、 「合宿ならそのたびにお互いの部屋に泊まりに行けばいいんじゃないか? 」 と…言いながら、ふと2人の表情を探ってくる。そして何事か気づいたらしく、 「本当のことを言ってくれ。特に諒、そうじゃないともう俺たちもお前たちを守りきれない。」 2人は言いよどんだ。 「まさか諒、離婚の原因はこれか? こういうことなのか? 」 諒は答えに困る。 「だめだ。俺は許可しない。」 「でも俺たちはもう、いっぱいいっぱいなんです! 」 麻也が思わず声高に言うと、 「何がいっぱいいっぱいなんだ? 仕事か? 2人の恋愛か!? 」 2人は絶句した。

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