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第7章の4
そして今度は麻也に向かって、
「麻也、お前のウワサは聞いたから、俺もうすうすはわかってきた。
…ヒットメーカーともなれば芸術家なわけだから、
その…男も好きなんて趣味をどうこう言うつもりはないよ。
まあ、目立たないようにしてくれ、と言うだけで…」
諒の手前、顔から血の気が引いていくのが自分でもわかった。
反論というものができなかった。
「ただし、諒はダメだ。破局がバンドの崩壊になるかもしれないからだ。」
そして諒にはさらに厳しい口調で、
「そして諒、お前だってバンドの花形ってだけなら、男だっていいよ。
でもお前は子供だっている身なんだぞ。もっと行動に責任もってくれよ。
離婚したばっかりで恋人いますなんて、不倫だったのかよ? ってことにもなるし。
将来大人になって、真実を明かす時、どうすんだよ。息子さんだってどう思うか…」
「でも、その間は別れてたし…」
「はあ? 何だよ、お前らいつから付き合ってたんだよ! 嘘ついてたのか! 」
社長から麻也をかばうように諒が叫んだ。
「全部俺が悪いんです! 俺が麻也さんを誘って…」
「それがいけないって言ってんだよ。麻也の魔性に引っかかってのぼせやがって…
バンド内でそれをやるなって、俺は言ってんの! 」
2人は押し黙るしかなかった。
「結論は、今のうちに別れなさい、ということだ。破局が早い方が、傷は浅いからな。
バンド内恋愛は禁止!! 今ならまだ、許してやる。」
すると諒は、
「別れなければいいんですよね? 俺たち絶対に別れません! 」
「最初は誰でもそう言うんだよ! 離婚も経験してるのに懲りない男だな! 」
そして、立ち尽くす麻也に、
「麻也も頭冷やして考え直せ! お前がこんなことになるとは…」
そして、社長はとうとう立ち上がり、諒に向かって、
「こんなことのために、バンドを危険にさらさないでくれ!
大切な時なのに…」
「こんなことって何ですか! 俺たちは大事な話をしてるのに! 」
「寮を出る話は、お前らは中止だ! 引っ越しなんかするな! 」
そして、かえって頭を冷やせ! と社長室を追い出されてしまった。
2人は唇を噛みしめ、足早に事務所を出た。
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