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第7章の7

 …社長室に入ると、会議用のテーブルの上には、スポーツ新聞が3紙ほどと、 企画書が置かれていた 新聞にはやや大きめの写真とともに、ディスグラの武道館の成功が書かれていた。 「この他にも女性週刊誌や何かにも出る予定なんだ。」 ほぼ音楽雑誌しかチェックできていない2人には、新鮮な話だった。  しかし、これと引っ越しがどう関係するのか… 「ま、座って…昨日は感情的になって悪かったよ。」 そう社長は言うと、下を向き、 「引っ越しの件だけど、一つ条件を君たちがのんでくれたら応援するよ。 忙しいだろうから、家具や機材もプレゼントさせてもらう。」 えっ…麻也と諒は顏を見合わせた。 「…事情が変わったんだ…何から話せばいいのかな… まずはその企画書から見てくれる? 」 それは「情熱ジャパン」というテレビ番組の企画書だった。 その番組は、日曜夜の人気番組。 新進気鋭のアーティストや、旬の有名人などに密着するドキュメンタリー番組だ。 「今度、君たちにオファーが来たので、それに出てもらうことにした。 そのために急きょイベントへの出演も決めたから。」 穏やかに諒が、 「じゃあその出演までのドキュメントってことですか? 」 「まあそうだね。こっちも急いでいるから、短期間の密着ってことになるね。」 意味がわからなくて、麻也は、 「それと俺たちの引っ越しとの関係って…」 「君たちの新居での合宿生活も撮らせてもらいたいと思ってね。 楽器に向かって作曲している姿とか、歌詞書いてる姿とか…」 一瞬の間。そして社長は続けた。 「…キスしているところとか、イチャイチャしているところとか。 それをほどよく混ぜてほしいって感じかな。」 わからないことだらけだった。

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