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第7章の8
「どういう意味でしょうか? 」
麻也をかばうように、警戒しながら諒は尋ねた。
すると社長は諒を見つめ、
「お前のことがリークされてる。離婚のことや、子供のことが。
出元はローベル企画だ。」
麻也は気を失いそうになった。
あの坂口の会社…何も言えなかった。
「あっちはウチの足を引っ張りたいんだろう。新人バンドを売り出すにあたってね。
ウチは向こうに比べたら小さい事務所だから、もみ消すなんてできない。
俺のコネで、掲載を待ってもらうのがやっとなんだ。」
そして社長は、まさかこんなことが本当にあるなんて、
振りかかってくるなんて思わなかったよ…とため息をつく。
諒はがっくりとうなだれた。が、社長は、
「それで俺も考えたんだが、もう俺たちにできることといったら、
ステージで思いついたんだけど、諒と麻也のラブラブをステージ以外でも見せて、
女の子たちに喜んでもらって、マイナスイメージを少しでも忘れてもらうしかないと思うんだ。」
「そんな、子供だましみたいなこと…」
ようやくのことで麻也が言うと社長は、
「…子供だまし、と思うなら、思ってろ。その方が俺も気が楽だ。」
「えっ…? 」
「…お前たちならもっと違うことを言うと思ってたからさ。」
麻也はすぐに気がついた。
「…私生活の、切り売り…? 」
「そう。事実上はそうなるわな。そして、そう思わせることを狙うことになるわけだ。
ライブでのキスで喜んでる、女の子のやおい趣味的なところを狙う…」
「そんな…俺たち、活動がうまくいってるミュージシャンなのに、
私生活を売るなんて、そんな売れない芸能人みたいなこと…」
諒も抗議する。が、社長は、
「君たちは、やれるだけやってみようという気はないのか?
バンドの危機なんだぞ! 」
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