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第7章の9

「でももう俺は離婚していて、独身だし。」 「そういう問題じゃない。」 「そりゃ俺一人で済む何かなら、何だってやりますよ。 でも麻也さんを巻き込むなんて、まっぴらです! 」 「どうして? 何でだめなんだ? バンドが生き残れるかの瀬戸際なんだぞ! 」 「だから、それがおかしいでしょう! 俺の過去ぐらいで、バンドが揺らぐんですか! 」 すると、社長は、 「揺らぐ。」 「はあ? 」 「残念ながら、お前たちの立ち位置ではまだアイドル扱いの部分も多い。 それに、また残念だけど、日本のロックバンドは、 そういう女の子の恋愛感情みたいなものに支えられている部分が多い。」 みんなで黙り込んでしまった。  真実を見せていると思うのは、バンド側。  それを見て、喜ぶファンは「真実」と思うのか、演出と思うのか… 「…でも…何にしても、麻也さんが、視聴率のいいテレビで、俺といちゃつくなんて… ああ、そうだ、俺たちがリアルにその…愛し合っているのが『気持ち悪い』って思う人だって多いはずですよ。 だから、この話は成立しない! 」 「でもお前らは、ライブでラブシーンやってもファンが増えてきたんだろうよ。 いや、むしろそれで増えたんだろ? 今回なんか、テレビだからあそこまで濃厚になんか出来ないし、する必要もない。 星の数ほどあるロックバンドの中でバンドを印象付けるための、 捨て身の、あざとい演出と思うか、 諒と麻也の真実と思うかは、見ている人の脳内にお任せだよ。」 「でも社長は、実は演出以上のものを求めているじゃないですか! 独身になった俺が『誰かと恋愛する可能性があります』って見せたいわけでしょ? それを立証するためには誰かが必要で、オンナだとファンの女の子が離れるから、 でも、素敵な人じゃないと困るから、麻也さんに白羽の矢を立てたわけでしょ? 」 すると社長はそれを認めた。 「はっきり言えばそうだ。お前たちが付き合ってなかったとしても、 ステージでラブシーンやってるからいいだろうって、俺は同じことを提案しただろう。」 「…」

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