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第7章の10
「ただ…こういうメリットがあると思えないか?
ゆくゆくは日本のマスコミも変わるかもしれない。
今みたいな黙殺ではなくて、男同士の恋愛も取り上げられて、
スキャンダルになるになるかもしれない。
そうなれば、その昔からほわーんと出ていたお前たちの関係は、
きっと既婚者扱いで、スキャンダルにはならない。」
「そんな…」
すると社長は、今度は麻也に、
「麻也、お前は抵抗ないよな? 男といちゃつくのは? 」
嫌な言い方だと麻也は思った。
諒の目の前でこれ以上言われては、と、
「俺は…俺は諒と出会ってから、諒以外の人間に、その…触れたことはないんです。
社長がどんなウワサを聞いたかわかりませんけど、
そんな『男なら誰でもいい』みたいに言われるのは心外です。」
言いながら、前のバンド時代のほとんどのウワサを社長が聞いていたらどうしようと思ったが、
社長は、
「その点はすまなかった。俺もうろたえてしまって申し訳ない。」
それは本当のようで、文字通り社長は頭を抱え込む。
それを見て、麻也の決心が固まりかけた時、諒が、
「真樹や直人には何て言うんですか? 」
「うん? いや、それも俺は困ってるさ。
逆に君たちならなんて言う? 演出だから? 人気ダウンの防止策とか? 」
それを聞いて、麻也は悲しくなった。
さっきから、祝福される可能性みたいなものが、全然語られない…
それが、真樹や直人に関しても、である。
まあ、実際、2人も祝福してはくれなさそうだが、せめて真樹には…
それはほとんど諒も同じだったらしく、
「その部屋って全くの撮影用なんですか? 撮影終わったら撤去なんですか? 」
「いや、違う違う。あくまで君たちの引っ越し先として、
撮影前も撮影後も住んでもらっていいんだ。」
2人は困って顔を見合わせた。
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