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第7章の11

 ようやく諒が、 「メンバーには俺から言います。その部屋で、麻也さんと一緒に暮らすって。本気だって。 メンバーや事務所のみんなに理解してもらえたらそれでいいです。 テレビの向こうやファンには演出とかって思われてもそれはそれで。」 ねっ? と諒は麻也の肩を抱き寄せる。しかし麻也は、 「でも、ファンや若い人は、その…男同士の絡みって何ともないと思いますけど、 ファンじゃない人や年齢の高い人にはどうかなって… 何より諒のご両親なんかどうするの? 」 「バンド内の仲良しとの同居って言う。 オンナとの同棲より安心してくれると思う。大翔も。」 「大翔君はまだわかんないだろうけど…」 でもやっぱりどちらも親には言えない…社長の手前、口には出せないが、つらかった。 でもこれは、結婚が決まっていない普通のカップルと同じと思うことにした。 「…に、してもさ、俺はともかく、諒にまで変なウワサがたったら…」 「いいよ俺は。それより麻也さんの方が心配だよ。」 でも俺が守るからね、と諒が麻也に微笑むと、社長は、 「じゃあ、諒の提案でいくってことでいいんだな。」 が、そこで麻也ははっと気づき、社長を見つめてこう尋ねた。 「社長、では、俺たちの仲は事務所公認、てことでいいんですね。」 社長は、うっ、と詰まったが、 「まあそういうことだ。」 さらに諒がたたみかけた。 「はっきり『認める』という言葉を下さい。」 「わかった。認める。守る。」 「やったあ! 」 しかし、社長は心配そうにこうも付け加えた。 「ただ、結婚の代わりに、披露宴をやるとか、 養子縁組みたいに戸籍をいじるとかする時は、 事前に相談してくれよ。」 2人は現実をまた思い知らされ、重い気持ちでうなずいた。

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