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第7章の13
先に口を開いたのは直人だった。
「…いや、つきあってそうだなとはうすうす感じてたけど…
一緒に暮らすのは無理でしょ、っていうか、何のために? 」
「無理って…」
諒が不本意そうに尋ね返すと、
「だって、2人の曲の志向って違うじゃん。
その微妙なバランスの上に俺たち成り立ってるのに、
…一緒に暮らした方が、曲もまとまらないし、
ケンカが増えるだけで愛が壊れそうじゃん。
別に暮らしてる方がいいんじゃないですか? 」
以前のことを知っているはずの真樹さえ、とにかく驚いて、
「兄貴、何だよこれ。『一緒になる』って何? 」
麻也が困ってしまって言葉を探していると、
諒がそれを引き取って、
「真樹さん、お兄さんのことは、俺が一生守ります。大事にします。」
「無理でしょ、もう…っていうか、そんなこと言えるほど、
長くつきあってたの? そんなわけないだろ。」
そう言われると、確かにそうだった。
ずいぶんのぼせ上がって突っ走ったものだと、麻也は初めて気づく。
(でも、諒に見放されたら、俺は…)
過去が、つらい…
真樹が抗議する。
「社長! こんなのいいんですか! 」
すると社長は冷静に、
「机の上の企画書を見てくれないか。」
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